ラーメン店主の憂鬱
俺はラーメン店主だ
もともとラーメンは好きだったんだけど、あるとき立ち寄ったお店で、美味しいラーメンを食べながら幸せそうな親子を見て、俺もこんな仕事がしたいって思ったのがラーメン店を始めたきっかけだ。
オープンと同時に新し物好きなお客さんがけっこう来てくれたんだけど、すぐに客足が途絶えた。
今思えば、麺もスープもありきたりで、仕上げも雑だったからさもありなんだ。
それから休日には人気店をまわったり、ネットのレビューなんかを参考に試行錯誤して、ようやくちらほらお客さんが来てくれるようになってきた。
うちのラーメンを気に入ってくれるお客さんがお客さんを呼んでくれたり、ネットでもちょこちょこ良い評判を書いてもらえるようになってきた。
おかげさまで常連さんも何人か出来た。
俺の作ったラーメンを食べて幸せそうな顔を見るのが俺にとってはなによりの喜びだ。
先日こんな連絡が来た。
「はじめまして。ラーメン批評ブログをやってる熊太郎です。おたくのラーメンを記事にしたいと思っているのですがいかがでしょうか?」
ラーメン店をやっているからには良い事も悪い事も書かれるし、こちらが制限できる筋合いでもない。
他のお客さんにも好きに書いて貰っているから、断る理由など無い。
その旨返信するとこんな返事が来た。
「では相互無償という事で」
え?
いやちょっと待て。
こっちから頼んだわけでもないし、なんでタダで食わせないといけないんだ?
新手の無銭飲食か?
熊太郎の主張はこうだ。
・自分は無類のラーメン好きだ
・ラーメンには一家言持っているぞ
・そこそこ読者もいる
・記事になる事で宣伝にもなる
・そちらのお店までの交通費もかかるがそこはこちらで持つ
・ラーメンを食べに行ったり記事を書くために貴重な時間を割くんだぞ
・記事を書くにも相応の労力と、なにより俺様の才能を注ぎ込むわけだし
それをこっちもタダで提供するんだから、ラーメンぐらいタダで用意しろよって事らしい。
バカバカしいんで丁重にお断りした。
確かに店のホームページ用の写真撮影の時は無償で用意した。
それだって見た目重視で味付け度外視だっから当然といえば当然。
撮影終わりにはスタッフの人たちは「このままお客さんになってもいいすか?」とお金を払ってラーメンを食べてくれた。
「うまいうまい」って嬉しそうに。
お金は要らないって言ったのにもかかわらず「それじゃ失礼だから」って。
気持ちの良い若者たちだったなぁ。
勉強会と称して仲間のラーメン店同士でお互いのラーメンを食べる事もある。
その時ですらお互いお金は払うんだよね。
なんかそれが礼儀のような気もして。
さすがに友達とか仲の良い知り合いなんかにはおごるけど。
熊太郎だけならいざしらず、けっこう同じような事を言うヤツが増えてきたようにも思う。
うちが街の小さなラーメン屋だからなんだろうか?
確かにうちのラーメンを気にとめてくれたのは嬉しいし、良い事を書いてもらえれば宣伝にもなるかもしれない。
だけど、たかが数百円のラーメンだけど、何時間も煮込んでとった出汁から作ったスープとか、麺だって日本中探してスープに合うものを見つけたり、それなりに努力もしてるし愛情も注いで作ってる。
簡単に「タダで」とは言って欲しくないし、ちゃんとお金を払って食べてくれる他のお客さんにも失礼だと思うんだよね。
それに仮にタダで提供したらこっちの思惑通りに書いてくれるわけ?
それってそもそも記事じゃなくね?
テレビで見た事のある有名なラーメンブロガーさんも、ちゃんとお金を払って食べていった。
そのかわり結構キビシイ事も書かれたけどね(笑)
たぶん悪気は無いのかもしれないけど、あんまりそういう依頼が多いんでちょっとツイッターとかでつぶやいてみたんだけど、変な議論を巻き起こしちゃったみたいっす。
てこと?
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